【3C分析を徹底理解】マーケティングの基本をフレームワークと事例で解説

この記事を読むと分かる事
  • 3C分析とは
  • 3C分析のテンプレートとそれぞれの分析方法
  • 3C分析の具体例と進め方

商品・サービスのマーケティングの定番=3C分析

商品・サービスのマーケティングの定番=3C分析

商品・サービスのマーケティングについて話す時に「3C」という言葉をよく耳にします。

「さんシー」とも「スリーシー」とも呼ばれるこの3Cの考え方に基づいて行う分析が「3C分析」です。海外などを中心に「3Cモデル」と呼ばれることもあります。

もともとはマーケティングの世界で使われていた分析アプローチですが、最近ではマーケティングに限らず企業戦略全般に関しても3Cの観点から語られることが増えています。

この記事では3C分析とは何か、どのように行うのかについて説明します。

3Cの「C」は3つの単語の頭文字

まず3C分析の「3C」とは何なのでしょうか?これは3C分析が扱う3つの分析対象を表す英単語の頭文字をとったものです。その英単語とは以下の3つです。

・Customer(カスタマー=顧客)
・Competitor(コンペティター=競合)
・Company(カンパニー=会社、この分析では自社のこと)

自社を意味する単語がMy companyでもなく、企業を表す他の単語(EnterpriseやFirm)でもないあたりは、3つのCでまとめるためにやや無理矢理の感があるかもしれません。

ただ、3つのCでまとめたという統一感、覚えやすさが、この分析フレームワークを有名なものとしているという面は否定できません。

その意味では、分析の視点の斬新さやフレームワークの使いやすさに留まらず、ネーミングの面でも“良くできた”分析フレームワークと言うことができるでしょう。

外部環境と内部環境を分析するフレームワーク

外部環境と内部環境を分析するフレームワーク

では3C分析はどのような目的で使われるのでしょうか?

3C分析はマーケティングなどの戦略を検討する際に行う、企業を取り巻く外部環境、そして企業の内部環境(組織、経営資源、人材、ビジネスモデル、コスト構造など)について分析するフレームワークです。

戦略を立案する際には、その戦略立案の前提となるファクトや戦略が実行される条件などをまず確認する必要があります。こうしたファクトや前提を整理する作業は「環境分析」と呼ばれますが、3C分析はこうした環境分析を行う際のフレームワークです。

戦略コンサルティングファームであるマッキンゼー&カンパニー日本支社の元代表で、現在はビジネス・ブレークスルー大学学長である大前研一氏が1980年代初に英文の著書で提唱したのが最初と言われています。(和訳:ストラテジック・マインド―変革期の企業戦略論)

3C分析のテンプレートと分析対象の情報

3C分析のテンプレートと分析対象の情報

3C分析がどのようなものかをご説明したところで、実際にどんな内容を分析するのかをご説明します。

3C分析のテンプレート

3C分析のテンプレート

上に示したのは3C分析のテンプレートの一例です。

用紙を3つのエリアに分けて、それぞれにCustomer、Competitor、Companyという3つの表題をつけてあります。

以下のリンクよりテンプレートをパワーポイント形式で無料ダウンロード頂けます。資料作成等にぜひご活用下さい。

フレームワーク テンプレート フリーダウンロード集

この様式に限らずフォーマットはいろいろありますが、ポイントは分析する対象が上記の3つに関するものであることがパッと見てわかることです。

従って、1枚の用紙を3つに分ける代わりに3枚の用紙を用意し、用紙ごとにCustomer、Competitor、Companyについて整理していっても構いません。以下では3つの項目について、どんな視点で分析するのかをご紹介します。

Customer(顧客)についての分析

Customerでは顧客情報を分析します。

自社商品・サービスの既存顧客はもちろん、今後獲得したいターゲット顧客・ポテンシャル顧客も分析の対象になります。新商品開発などでまだターゲット顧客も絞り込めていないようなケースでは、“消費者”という大きな塊を対象にして顧客分析を行います。

顧客について分析を行う時のポイントは顧客セグメンテーションです。一言で“顧客”とは言っても、世の中には様々な人がいます。統計データをとれば年齢、収入などで“平均的な顧客”像というのは設定できるかもしれません。

しかし、そのような計算上の顧客が世の中にどれだけ存在するのかは疑問です(多分ほぼ存在しないでしょう)。

平均的な顧客をイメージして製品開発やマーケティング活動をしてみたら、実はターゲットとなる顧客はほとんど実在しなかった、などというのでは笑い話にもなりません。

顧客を属性、ニーズなどに基づいてセグメントに分けた上で、自社がターゲットとしたい(するべき)顧客セグメントはどこかを考えていきます。今、自社の商品・サービスを使ってくれている顧客セグメント、使っていない顧客セグメントの特徴などは戦略を考える際に役立ちます。

さらにターゲットとする顧客セグメントが、どんなニーズを持ち、どんな意思決定プロセスをとるのかといった分析も戦略を考える上では重要です。

Customer(顧客)についての分析

Competitor(競合)についての分析

Competitor(競合)というと、日頃マーケットシェアで鎬を削っているライバルを想像するかもしれません。もちろん、こうした明らかな競合については詳細に分析する必要があります。しかし競合は同じ業種のライバルばかりとは限りません。

例えば現在の金融業界では、テクノロジーを駆使して金融サービスを提供する「フィンテック」と呼ばれるプレーヤーが既存の金融機関の大きなライバルになっています。こうしたプレーヤーは10年前なら金融機関のライバルとは認識されなかったでしょう。

また、セブン銀行やローソン銀行のように、コンビニエンスストアなどの小売業から金融に参入したプレーヤーも、ある分野では既存の銀行の強力なライバルです。

また新しい商品・サービスによって既存の商品が使われなくなるというように、代替品も潜在的な競合として意識する必要があります。例えばカメラは、いまや携帯電話・スマホによって写真を撮るための道具というポジションを追われつつあります。

また、ビジネスパーソンの出張に裏打ちされていたエアライン、鉄道やホテルへの需要は、SkypeやZoomなどの遠隔会議システムがPCで簡易に使えるようになったことで減少する可能性が高まっています。

こうした様々な競合について、その競合企業・商品の戦略、売上高や市場シェアなどのパフォーマンス、そして強み・弱みなどを分析します。

異業種からの参入者や代替品について考える時には、そうした潜在競合が自社の分野に参入する時の参入障壁についても理解しておく必要があります。

Company(自社/企業)についての分析

Company(自社/企業)は自社分析です。

自社の経営資源、戦略、カルチャーなどについて定量的・定性的に分析します。例えば売上高、収益率、成長率などの数値データを使った評価や、技術力、人材特性、カルチャーの特徴などについての定性的な評価などを調査します。

これらの情報に基づいて、自社の強み・弱みは何なのか、どんなところに成長の余地がありそうなのかなどを考えていきます。

 

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3C分析の事例~進め方、必要な視点~

3C分析の事例~進め方、必要な視点~

以下では3C分析の進め方、視点などを説明していきます。

ここでは事例として、サッカー日本代表チームの国内マーケティング戦略を考えるというテーマを置きます。

①目的を明確化する

これはどんな分析についても共通しますが、最初に今回の分析の目的とゴールを確認します。世の中には無数の事象やデータが存在します。

それらをすべて分析対象にしたのでは、時間も労力も無尽蔵に必要になっていまいます。何のために分析を行うのか、最終的に何をアウトプットとして得たいのかという目的を最初に明確にすることで、分析対象として見るべき範囲を確認します。

例えばここで事例としたサッカー日本代表のマーケティングであれば、一義的には日本国内がターゲット市場ですので分析は国内が対象になります。

しかし、今後アジアなどの海外市場も視野に入れるのであれば、海外市場も視野に入れなくてはなりません。何のための分析なのか、考えるべき対象範囲の全体像を整理してから分析を始めることが必要です。

またマーケティングで達成したいことが、サッカーの人気を高める(例えば代表の試合の観客を増やすとかテレビ視聴率を上げる)ことなのか、代表関連で協会が受け取る収入(ロイヤリティや関連グッズ売上など)の拡大なのかによっても、分析の対象は異なってきます。

この事例では前者のサッカー人気を高めることを目的として想定してみます。

②Customer分析~顧客セグメント、顧客ニーズ~

サッカー日本代表試合の顧客はどのような人でしょうか?まず、現在、日本代表のファンである人と、日本代表には関心の無い人が存在します。

さらに“ファン”も、スタジアムに足を運ぶ人、テレビなどでのみ観戦するのみの人に分けられるでしょう。それぞれのセグメントについて、年齢、性別、職業、居住地、サッカーのプレー経験の有無などのデータを調査します。

さらにスタジアムで観戦する人について、年間の観戦試合数、観戦のきっかけ、チケットの入手経路、誰と観戦するかといった情報も収集します。

これらは既に調査した結果があればそれを利用しますが、無ければアンケート調査や消費者インタビューを実施します。テレビなどで観戦するのみの人についても、同様に属性情報、観戦頻度、観戦の仕方などを調査します。

こうした情報は現在日本代表の試合を観戦している人にもっと観戦数を増やしてもらったり、テレビでしか観戦しない人にスタジアムに足を運んでもらったりするといった、“もっとファンになってもらう”方策を考える際に必要になります。

一方、現在はサッカー日本代表に関心が無い人や、ある程度の関心があっても試合を観戦するほどでは無い人を新たなファンとして取り込むことも考える必要があります。

従って、これらのセグメントについても調査が必要です。年齢、性別、職業、居住地といった属性や、サッカーのプレー経験、趣味、好きなスポーツといった嗜好や経験に関しても知りたいところです。

こちらのセグメントについても、データ収集やアンケート、インタビューなどを実施して必要な情報を集めます。

こうして顧客に関する分析を進めていくと、顧客(及び潜在顧客)がサッカー日本代表の“競合商品”として何を比較しているかが見えてきて、Competitor(競合)の分析への示唆となります。

例えば、日本代表の試合は見ないけどヨーロッパのサッカーは見るとか、サッカーは見ないけどプロ野球やバスケットボールは見るという人が多くいるかもしれません。

また、サッカーに関心はないけど、ジャニーズアイドルのコンサートには年間何度も足を運んでいる女性が多ければ、サッカーの代替商品としてジャニーズアイドルが位置づけられるかもしれません。

こうしたことが分かれば競合分析の対象が見えてきます。

②Customer分析~顧客セグメント、顧客ニーズ~

③Competitor分析~直接競合、潜在競合~

サッカー日本代表にとって競合となるのはどのような商品でしょうか?

直接の競合としては、同じサッカーの試合というコンテンツを提供しているJリーグのチームやヨーロッパのサッカーチーム(FCバルセロナやマンチェスターシティなど)が挙げられるでしょう。

ただし、日本代表メンバーの多くはJリーグやヨーロッパのチームで活躍する日本人選手であり、直接的な競合とはなりにくいかもしれません。

わかりやすい競合は、他のスポーツでしょう。特に日本のプロ野球(NPB)は長い歴史があり、団体で行う球技という意味でもサッカーの競合と考えられます。

また、最近はバスケットボールのBリーグや、2019年のワールドカップ以降盛り上がりを見せているラグビーのトップリーグなど新たに盛り上がってきた団体球技スポーツもあり、サッカー日本代表の競合と考えられるでしょう。

これらの球技スポーツは、どのような実績をあげ、どんな顧客を獲得しているのか、どのような戦略を採っているのかなどは競合情報として重要です。

例えばプロ野球の場合、ジャイアンツ、タイガース、ホークスといった個別チームが依然として話題の中心です。野球日本代表はまだ歴史も浅く、何と言ってもサッカーのワールドカップのような世界的国別対抗戦の仕組みが無いことで代表チームへの注目はサッカーの代表ほど高くありません。

しかしプロ野球全体としてのファン層は幅広いものがあり、最近は伝統的なファン層(男性、中高年)に加えて新たなファン(若い女性)を獲得しているなど、スポーツファンの獲得において大きな競合と言えます。

さらに伝統的なスポーツの枠組みを超え、最近ではeスポーツとしてコンピューターゲームをプレーするところを観戦するファンも増えています。

また、顧客のところで触れたように、アーティストのコンサートなどもスポーツチームにとっての潜在競合となっている可能性があります。このあたりは顧客分析の結果も見ながら、誰を直接競合や潜在競合として捉えるかを定義します。

尚、競合分析をする際には、その競合の強み、弱みは何かを自社との相対感を持ちながら理解することが必要です。

例えばサッカー日本代表にはヨーロッパで活躍する選手が多く含まれ、世界のトップ水準に近い競技レベルを有しています。しかし、野茂、イチロー、大谷…と本場アメリカのメジャーリーグでも超一流となった選手が数多くいるように、相対的に見れば日本のプロ野球の技術レベルは大きな強みと言えます。

その意味で、この後にご説明するCompany(自社)分析も考慮しながら検討を行うことが必要です。

④Company~強み、弱み~

自社についての分析です。まずは定量ベースのデータを集めましょう。

サッカー日本代表で言えば、観客動員数、テレビの視聴率、グッズの売上高、運営母体である日本サッカー協会の財務状は、年間の運営予算などは確認が必要です。

代表チームの実力は、国際サッカー連盟のランキングがあるのである程度は定量的に把握できるものの、それだけでは説得力がありません。こうした一見もっともらしい情報も多くありますので注意が必要です。

定性的な情報の収集も必要です。

サッカー協会首脳陣の経営手腕や、代表チームの指導者の指導力などは数字に落としにくく、エキスパートへのインタビューなどを通じた定性的な情報に依存する度合いが高くなります。企業の場合でも経営陣や人材の有能さなど、経営資源の評価については定性情報に依存する部分が多くなります。

また、ファンについて時々語られる、“情熱”や“思い入れの強さ”は、アンケートなどである程度の定量化はできるかもしれませんが、やはりインタビューで生の声を集める必要があるでしょう。

こうした定量、定性情報の収集に基づいて、サッカー日本代表の強み、弱みは何かを整理します。

「強みはチームワークと個々の選手の技術レベルで、弱みは海外勢に比べて弱いフィジカル…」、スポーツ新聞にはそう書いてあるかもしれません。

ただ、ここではマーケティングというビジネスの観点での分析が求められているので、このような“サッカーファン好み”の分析はあまり役立ちません。

「大スポンサーに支えられた財務基盤は強みだが、スタジアムで観戦するファンが固定されていて増加ポテンシャルが無いことは弱み」などと、経営戦略・マーケティング面で意味がありそうな情報を選別する必要があります。

分析に充てる時間や労力に限りがある以上、強み、弱みを分析すると言っても、考えられるものを手当たり次第に挙げていけば良いというものでは無いのです。

④Company~強み、弱み~

⑤打ち手仮説を構築

3C分析によって外部環境、内部環境を分析したら、その結果を踏まえて打ち手仮説を構築していきます。

例えばこんなストーリーが考えられます。

・カープ女子に代表されるようなプロ野球人気の復活や、W杯以来のラグビー人気、八村塁の活躍を受けたバスケットボールへの注目アップなど娯楽としてのプロスポーツ市場は競争が激化している。一方で日本は少子高齢化、人口減少社会であり、ファンとなる人数の絶対数が大きく伸びることが期待しにくいため、サッカー日本代表の未来は何もしなければジリ貧になるリスクが高い。

・スタジアムでサッカー日本代表の試合を観戦するファンは現在、特定の層に限られておりライバルとなるプロスポーツも増えている中で、新規ファンの開拓、潜在ファンの掘り起こしが必須。

・一つの打ち手としてファンの青田買いを進めることが考えられる。少年少女サッカーの一層の普及に向けた、指導者育成や少年少女チームへの金銭的助成を協会主導で行い、サッカーをプレーする習慣を拡大し、サッカーへの注目度を上げる。

・また子供たちがプロサッカー選手に注目するきっかけとして、ヨーロッパの子供たちに大きな人気を持つサッカー選手のトレーディングカードを日本でもマーケティングすることを検討したい。

3C分析に基づいてこうした仮説ベースストーリーを構築したら、もう一度3C分析に立ち戻って、仮説を検証するために必要な情報を集め、分析を行います。

この仮説構築→環境分析により検証→新たな(進化した)仮説構築というループを何度も回して最終的な打ち手を構築します。つまり3C分析は最初に1回やったらそれで完成というものではなく、打ち手の検討と行ったり来たりしながら進めていくものなのです。

3C分析をあなたの“分析の引き出し”に

3C分析をあなたの“分析の引き出し”に

3C分析についてご説明してきました。

様々な分析フレームワークがある中で、3C分析はSWOT分析と並びポピュラーなフレームワークです。ある意味では説明不要の、誰でも知っているフレームワークであり、分析の手法を聞き手に説明することなく使える分析と言えます。

もちろん、どんなケースでも3C分析が使える訳ではないのですが、戦略やマーケティング策の立案に従事する人であれば、必ず“引き出し”に入れておきましょう。

以下の記事では、MECEについても解説しています。是非参考にしてみてください。

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