- AI時代の営業職の行方
- 今後の営業職に必要なスキル
- AI時代の営業職に向く人の特徴
ビジネス業界の一大トレンドとなっている「AI(人工知能)」。
テクノロジー関連の発展はめざましく、ディープラーニングによってこれまで実現不可能とされてきた複雑な予測も可能になっている現実があります。
事業の成長に欠かせない「営業」という職種も、AIによってさまざまな変革がもたらされると期待されています。そこで今回の記事では、AIの発展とともに営業はどのように変わっていくのか詳しく解説していきましょう。
AIについては、記事の後半(そもそもAIとは何なのか)で詳しく解説しています。
AI時代の営業の定義は変化していく
AIによって営業の仕事が全て奪われることはないとしても、現在の営業という仕事が今のまま未来永劫続いていく可能性は低いと考えた方がよいでしょう。営業の仕事はこれまでどのように変化してきて、この先どう変わっていくと考えられるのか解説します。
テクノロジーの発達によって変革した営業
従来の営業職といえば、自分の足で客先へ訪問し、担当者と名刺交換をし、直接的なコミュニケーションをとって自社製品の販売につなげるということが主な業務内容でした。
そのうえで、顧客管理や営業日報、見積書の作成などの事務的な作業も非常に多く、長時間労働を強いられがちな環境となっていました。
しかし、近年ではSalesforceなどの営業支援(SFA)ツールが登場し、これらの事務的作業の負担が大幅に低減。さらには社内や部署内で顧客情報を共有することもでき、効率的な営業活動が可能になっている現実もあります。
このように、そもそも10年前、20年前の営業と現在の営業では業務内容も必要なリソースも大幅に変化しており、それだけでも大きな変革が起こっているといえるでしょう。
AIの登場によって変化する営業
AIは定量的な業務や分析を得意としています。たとえばある共通の課題を抱えている企業にはどんなソリューションの提案が効果的で、売り上げに直結するのかを予測することもできます。
メールの問い合わせに対しては、質問の内容と回答をいくつかパターン化しておけば、営業担当者の手を煩わせることなくAIが自動的に返答してくれることも可能です。さらには、これまでのように営業支援ツールやRPAのようなツールを活用すれば見積書や請求書などの事務的な作業も大幅に軽減してくれることでしょう。
このように、AIを活用することによってこれまで営業担当者が抱えていた定量的な作業にかける時間は圧縮され、より専門的でクリエイティブな業務に集中することが可能になります。
AI時代の営業
顧客の潜在的な課題を解決
AIは事務作業や顧客管理、さらには提案すべきソリューションの選定などを得意としています。しかし、企業ごとに抱えている課題が異なる状況において、潜在的にどのような問題を抱えているのかを判断することは難しいもの。
従来の営業といえば顧客から相談されたことを実現する、いわゆる「御用聞き」のような役割が大きかったと思います。しかしその後、課題を解決するソリューション型の営業が重宝されるようになりました。
しかしこれらは、あくまでも顧客自身がすでに把握している問題や課題を解決するための営業であり、これからは、担当者との何気ない会話の中からその企業が抱えている課題のヒントをつかみめるかといった、顧客が気付いていない課題を解決するようなスタイルが求められていくと考えられます。
AIによって効率化するチーム作り
従来、営業としてのスキルは個人の能力に比例する部分が少なくありませんでした。コミュニケーション能力、事務作業の効率性、体力など、一人ひとりに備わったスキルによって営業成績は左右され、営業に向いている人とそうでない人が区別されてきました。
しかし、AIを活用することによって、これらの属人的なスキルの差は徐々に縮まっていくと予想されます。たとえば、メールの文面をAIによって自動作成が可能になったり、見積書や請求書などを手作業で作る機会も大幅に減少することでしょう。
さらには、その日どの顧客に訪問すれば効果が見込めるかをAIに管理させることによって、体力的にも無理のない訪問スケジュールが立てられるようになります。
このように、AIは営業担当者ごとのスキルの差を埋め、結果としてチーム全体の底上げにも貢献するツールとなっていくと期待されます。
売上の結果が全てではなくなる
営業活動にAIが導入されるようになると、AIによって予測が効率化され、売り上げ自体も底上げしていくことになります。営業はAIが示した顧客先に訪問し、AIが指示した通りの提案をすれば成約率も向上することになるでしょう。
しかし、これでは売り上げが高い営業=優秀な営業とは必ずしも直結せず、評価の仕組みも変革を迫られることになります。
AI時代の営業において新たな評価基準として考えられるのが、「AIへの貢献度」です。たとえば、ある企業がどんな課題を抱えているのか、それに対してどんなソリューション提案を行い、その反応はどういうものであったのかといったことも、AIの予測に大いに貢献できる材料となります。
もちろん、AIのデータに頼らず自らが考案した内容を提案し、それが結果的に売上に結びついたのであれば、それもAIにとって貴重なデータとなるでしょう。
このように、AIが予測しているデータ以外に新たな材料としてデータを提供できたかも営業の評価基準となるかもしれません。
AIが営業部隊と組織にもたらす変化
AIの活用方法は営業手法だけではなく、会社という組織において効率化・体制強化にも採用されると考えられます。具体的に組織はどう変わっていくのか、営業という視点から考えてみます。
評価基準が明確になる
AIが人事評価にも活用されたとき、評価基準が明確でフェアなものになっていくと考えられます。現在多くの企業では、評価基準が設けられているとはいえ、上長や役員が最終的に従業員の評価を決定しています。
身近な人間が評価をすることによって公正な評価につながると考えられがちですが、人間である以上は恣意的な評価がされる可能性もゼロではありません。
本来評価には関係のない個人的感情を持ち込むのは論外ですが、上長や役員によって変わる曖昧な評価基準や考え方が反映されるのは公平とはいえません。
AIが人事評価に反映されるようになると、それらの曖昧な根拠が一切排除され、誰の目から見ても公平な評価が下されるようになります。また、あらかじめ評価基準が明確になっていれば、それを達成しようと営業のモチベーションも上がることになるでしょう。
教育体制の充実
これまで営業社員といえば、入社後一定期間は先輩社員の後に付いていき、営業手法を覚えていくといった教育体制が一般的でした。基本的な研修を受けていたとしても、実際の営業においては多様な要望を受けることが多く、それらは現場を回ってみないと体験できないものです。
AIを営業に活用すると、たとえばその場でAIが課題解決につながるソリューションを提案してくれたり、さまざまなナレッジが集約された中から解決策に近いヒントを与えてくれたりすることもあります。
現場における顧客とのコミュニケーション手法やマナーを覚えるためには、ある程度の先輩社員との同行は必要ですが、技術的に必要なスキルはAIによるツールなどを駆使することで一気に解決できるようになるはずです。
このように教育体制が充実することによって、新入社員がスムーズにスキルを身につけることにつながると同時に、既存社員が新人教育にかける負担軽減にも役立ちます。
AI時代に求められる営業職の人材とスキル
AI時代の到来によって、求められる営業職のスキルと理由を解説します。
新たなテクノロジーに興味を持てる人材
今後AIをビジネスに活用していくトレンドは一層加速し、より多くの企業からAIのニーズは高まっていくと予想されます。これまでAIとは無縁と思われてきた業界においても、何らかの形でAIのような最新のテクノロジーと関わっていくことになる可能性が高いです。
従来の携帯電話からスマートフォンへと大きな変革が起こったように、今後AIの世界においても大変革が待っています。企業からのニーズに応えるためにも、新たな技術を拒むのではなく興味を持てる人材が求められると考えられます。
AIに使われるのではなくAIを使いこなす営業
AI時代において優秀な営業になるには、卓越した営業スキルはもちろんですが、AIに関連する知識やノウハウも求められます。AIが導き出した通りに動くロボットのような存在ではなく、AIが出した答えをヒントに、新たなイノベーションや提案活動をする人材が優秀な営業の基準となっていくことでしょう。
AIの特性や仕組みを理解し、AIと対立するのではなく、新たなテクノロジーとして共存し使いこなしていくことが新たな営業の生きる道になっていくかもしれません。
AI時代に営業職へ転職は有利なのか
AIによって今後営業がどのように変化していくのか、いくつかの事例を紹介してきました。結局のところ、AI時代を見越して営業に転職することは良いことなのでしょうか。
AI時代だからこそ優秀な営業は貴重
AIによって効率化されるとはいえ、顧客のなかには自分の意思を汲み取ってくれる優秀な営業は重宝される存在です。
AIというシステムに頼らない、営業独自のトークや知見を発揮できる人材は顧客から見ても頼りになる存在であり、AI時代だからこそ希少な営業として見られることでしょう。
顧客とのコミュニケーションが好きで、営業という仕事に魅力を感じる方は自身の営業スキルを磨いていくことで、AIに負けない存在になっていくと期待されます。
そもそもAIとは何なのか
ここからは「AI」について詳しく解説していきます。AIの特性を把握する事で人間の強みや営業職として必要なスキルを改めて考えてみてください。
「AIによって営業は変革されていく」と聞いても、そもそもAIとは何なのかがいまいち分かっていないという方も多いのではないでしょうか。
なんとなくアニメーションに登場してくるような人型のロボットを想像し、何でも解決してくれる万能なシステムを想像している方も少なくありません。
「強いAI」と「弱いAI」
AIには大きく分けて強いAIと弱いAIという2つの定義が存在します。強いAIとは「汎用人工知能」ともよばれ、用途を問わずあらゆることに対応できるAIのことを指します。
古くから日本のアニメーションに登場してきた人型のロボットは、いわゆる強いAIに相当するものと考えて良いでしょう。それはまさに人間の知能そのもので、テクノロジーの発展とともに人間を凌駕していくとされています。
これに対して弱いAIとされているのは、「特化型人工知能」とよばれているものです。その名の通り何か一つのことに特化して作られたAIのことで、たとえば画像を認識する、言葉を認識する、データを分析するといった用途が典型的な特化型人工知能の特徴です。
強いAIは実現できていない
強いAIというものが定義されているということは、そもそも営業という職種が必要なくなるのではないかと心配になる方もいるかもしれません。
しかし、実は強いAIは現時点で実現できておらず、現在「AI(人工知能)」とよばれているものは弱いAIがベースになっている現実があります。
そのため、あらゆる課題を解決してくれる夢のようなAIやロボットの開発はまだまだ先の話であり、少なくとも5年、10年といったスパンにおいてAIによって営業の仕事が全て奪われてしまうということは現実的な話とはいえないでしょう。
AIの真髄であるディープラーニング
弱いAIから強いAIへの進化の過程において、鍵を握る技術とされているのがディープラーニングです。ディープラーニングとは、そもそもAIの機械学習における手法のひとつで、日本語では「深層学習」と表現されるものです。
たとえば、人間の赤ちゃんが言葉を理解して会話するようになるまでには、大人が発する言葉を繰り返し聞いて自然と習得していきます。AIのディープラーニングもこれに似ています。
たとえば画像認識システムの場合、「犬」と「猫」を見分ける際に、犬の画像を大量にAIに認識させることによって自動的に特徴を習得していきます。耳の形や顔つき、尻尾の形、体毛の色など、それが犬であることを認識するためには画像から特徴となる傾向を導き出していくことが必要です。
ディープラーニング技術は現在多くのAIに活用されており、画像認識以外にも自然言語処理や音声認識などにも欠かせないテクノロジーです。営業におけるAIの活用という点から考えても、ディープラーニングの特性を理解することは重要なポイントといえるでしょう。
AIに奪われる職業
AIは画像認識や自然言語処理、需要予測などのAIの機能はさまざまな業種に活かされ、これまでのあらゆるビジネスモデルを再定義するほどインパクトの強いものです。
AIという言葉が社会に浸透してきたと同時に、現在ある仕事のなかでAIに奪われるものが出てくるといわれています。
代表的な職種を挙げてみると、小売店販売員、会計士、一般事務職、レジ係、運転手など、どれも私たちの生活に密着した職種ばかりです。そして、これら一覧の中には営業職も含まれています。
これほどまでにAIが注目されるようになったのは、テクノロジーの発展によって新たに実現可能なものが増えるというポジティブな理由がある一方で、上記に挙げたように仕事が奪われてしまうといった危機感があるのも大きな一因かもしれません。
しかし、AIによって仕事が奪われるといっても、それが現実のものになるのは3年後なのか30年後なのか分からず、職種によっても実現可能な確率は大きく変わってくることでしょう。
現在、スーパーなどの小売店ではセルフレジの導入が進んでいますが、それでも何らかのトラブルに備えて完全無人の仕組みを導入しているケースはほとんどありません。
また、ECサイトが台頭して実店舗の勢力が弱くなっているといっても、実店舗がなくなっているわけではありません。
これと同様に、AIが導入されて仕事は効率化されたとしても、完全に人間の仕事が奪われるかといえば、現時点では決して現実的とはいえないかもしれません。
この記事をお読みになった方で、ご自身の今後のキャリアについて考える事もあったかと思います。
もし営業職での転職、もしくは他の業種への転職をお考えの方は、転職エージェントに相談してみるのもおすすめです。興味のある方は下記の記事も参考にしてみてください。
特に収入アップを目指して転職したい人は、既卒・第二新卒から30代を中心に転職支援を行っているtype転職エージェントがおすすめです。実際に、サービスを利用した転職者の約71%が年収アップしてるという実績があります(2020年9月 公[…]