ブランドエクイティとは何か分かりやすく解説!成功事例も紹介

最近はマーケティングの専門家では無い人も「ブランド」という言葉を使うことが普通になりました。

日本に紹介された当初は、エルメス、グッチといったファッションに関して使われることが多かった言葉ですが、今や様々な商品・サービスについてブランドが語られるようになっています。

そしてこうしたブランドの価値を表すのがブランドエクイティ(Brand Equity)という言葉です。

この記事では、マーケティング戦略だけでなく企業戦略を語る際にも重要な概念であるブランドエクイティについて、わかりやすく解説します。

ブランドエクイティとは

ブランドエクイティとは

ブランドエクイティの意味をひとことで言えば「ブランドが持つ価値」のことです。

エクイティ(Equity)は、ビジネスシーンではエクイティファイナンス(株式の発行を伴った資金調達)のように株式、株主資本、自己資本といった意味で使われることが多い言葉です。

企業会計を学んだことのある人であれば、自己資本は資産と負債の差であることを知っていると思います。

ブランドエクイティも同様に、ブランド資産(ブランドがもたらすプラスの価値)とブランド負債(ブランドがもたらすマイナスの価値)の差と考えるとイメージしやすいかと思います。

不動産や有価証券のような資産や借入のような負債と同様に、目には見えないが企業の価値に影響を与えるブランドの価値を把握しようという姿勢によって生まれた考え方です。

ブランドエクイティの構成要素と2つのモデル

ブランドエクイティ 構成要素 2つ モデル

具体的にブランドエクイティを考える際には、ブランドのもたらす価値をいくつかの構成要素に分けて考えるのが一般的です。

この構成要素の分け方では、アーカーモデルとケラーモデルの2つが有名です。

アーカーモデル

アーカーモデルは、カリフォルニア大学バークレー校ハース・ビジネススクールのデビッド・アレン・アーカー名誉教授が提唱した考え方です。

アーカー教授は1991年に出版した「ブランドエクイティ戦略」においてブランドエクイティという概念を提唱した人で、ブランド論に大きな影響を持っている人です。

アーカーモデルでは、ブランドエクイティは以下の5つの構成要素からなる、としています。

アーカーモデル

ブランドロイヤルティ

そのブランドに対する顧客の愛着や忠誠を表します。

簡単に言えば、そのブランドがどのくらい顧客から愛されているのか、そのブランドのファンである顧客がどのくらい多いのかということです。

ブランドロイヤルティが高ければ、顧客はそのブランドの商品を繰り返し購入したり、知り合いに薦めたりするため、ブランド保有企業に価値をもたらしてくれます。

ブランド認知

そのブランドがどのくらい知られているのかを表します。

聞いたことも無いブランドより、知っているブランドの方が我々は安心して買い物をすることができますよね。

ブランド認知は単に多くの顧客がブランドの名前を知っているだけでなく、ブランドの歴史やブランドに関するストーリーを知っていればより高くなります。

ブランド連想

顧客がそのブランドから連想するものです。

ポジティブな内容を連想してもらえれば、そのブランドは高い価値をもたらしていることになります

ブランド連想は顧客のそのブランドの利用経験や、広告などによってもたらされます。

知覚品質

顧客がそのブランドの品質をどう評価しているかです。

ここでの品質は単に商品の機能・スペックだけでなく、その商品を使うことによる安心感とか幸福感といった顧客の主観による評価も含みます。

その他ブランド資産

著作権や特許のような知的所有権、顧客や取引先との特別な関係など、ブランドの価値に関係する様々な無形資産もブランド資産の一部です。

ケラーモデル

ダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネスのケビン・ケラー教授が提唱したモデルです。

ブランドの価値を高めるマネジメントプロセスを、4つの階層からなるピラミッド型の構成要素で表現しています。

ケラーモデル

レベル1:ブランドの認知~ブランドの突出性

ベースとなる最下層のレベルは顧客が他のブランドと自社のブランドを区別し、ブランドを認知できるようにすることです。

顧客がブランドを見て特定の商品を連想するように周知していくことも含みます。

レベル2:ブランドの意味付け~パフォーマンス/イメージ

次のレベルは2つの要素で構成されます。

1つ目は顧客にその商品の機能・スペックを理解してもらうことを意味するパフォーマンスです。

2つ目は自社が目指すブランドイメージを顧客に正しく伝えることです。

これら2つにより、顧客に対して正しくブランドの意味付けを行います。

レベル3:ブランドへの反応~理性的判断/感情的評価

3つ目のレベルは顧客からブランドへの適切な反応を引き出すことです。

品質や機能に対しての評価である理性的判断と、安心・信頼、楽しさ・興奮などの感情的評価から構成されます。

こうした反応をブランドのコンセプトに沿ったものにしていきます。

レベル4:ブランドへの共感・同調

最上位に位置するのは顧客とブランドが心理的に強く結ばれた状態です。

前出のアーカーモデルで言えばブランドロイヤルティが確立された状態になります。

ブランドエクイティを重視する理由

ブランドエクイティ 重視 理由

ブランドエクイティが重視されるようになった背景には、顧客と企業の関係を一度きりの取引で考えるのではなく、顧客の生涯を通じて繰り返し商品・サービスを利用してもらうことによる価値の大きさを考慮するべき、という考え方が認知されてきたことがあります。

こうしたリピート客をもたらすのがブランドの力であり、その力の大きさを把握したいという問題意識が、ブランドエクイティを重視するという流れにつながったのです。

ブランドエクイティが高まるとリピート客の増加が期待できる他、競合ブランドに対する差別化が可能になるので価格競争上も優位になります。

また、ブランドロイヤリティの高い既存顧客による口コミでの推奨といったマーケティング面でのメリットも期待できます

ブランドエクイティの評価方法

ブランドエクイティ 評価方法

ブランドの力を表すブランドエクイティを、定量的に評価しようという試みも行われています。

ブランドエクイティを評価して企業価値に折り込んだり、企業活動がうまくいっていることのKPIとして管理したりすることが主な目的です。

主な評価方法は以下のようなものです。

コストベース

そのブランドを確立するためにかかったコストを積み上げて評価する方法です。

広告宣伝費、企業・商品名やロゴなどの開発費用、商標登録に関する費用などを含みます。

キャッシュフローアプローチ

M&Aの際にDFC法で企業価値を分析するのと同様に、そのブランドが将来生み出すであろうキャッシュフローを推定してその現在価値で評価する方法です。

将来の利益も勘案する分だけ実態に近づく一方で、将来のキャッシュフローを予測する難しさがあります。

NPS®

NPS®はネットプロモータースコアのことで、顧客に「この商品・サービスを第三者に進めたいか」と質問することで顧客ロイヤルティを指標化したものです。

このNPS®を使ってブランドエクイティを数値として図る手法です。

ブランドエクイティの成功事例

ここまで、ブランドエクイティとは何かについての説明をしてきました。

以下では、ブランドエクイティの構築に成功していると言われる事例をいくつかご紹介します。

無印良品

無印良品

もともとは西友のプライベートブランドとして出発した無印良品ですが、今や「MUJI」ブランドとして世界的に知られたブランドになっています。

店舗数は国内479店、海外550店とアジアを中心に海外にも広く展開しています。

無印良品は商品にブランドのロゴなどはついていません。

また商品は衣類、家具、食品、文具…と特定分野に限りません。

それでも無印良品は顧客に「コスパに優れお得」「安心安全」といった共通イメージを持たせることに成功しています。

スターバックス

スターバックス

アメリカ、シアトル発祥のコーヒーショップチェーンであるスターバックスは、世界中に3万軒以上を展開する代表的なコーヒーチェーンです。

スターバックスの特徴は、コーヒーの味(その違いを理解できる人は限定的?)といった商品の特徴だけでなく、居心地が良く長居が出来る店舗、フレンドリーな店員といった「コーヒーを楽しむ時間」全体での高いクオリティを追求していることです。

これによって顧客はスターバックスというブランド全体に心地良さや高品質というブランドイメージを持ち、コーヒーショップ以外の連携商品(コンビニで売っているコーヒーなど)の売上拡大にも貢献しています。

長期的な購入行動に大きく影響する

長期的 購入行動 影響

ブランドエクイティは顧客のブランドへの思い入れや親しみがもたらすメリットを、ブランドの価値として評価する概念です。

ブランドエクイティが大きいことは、中長期で見た時に顧客がそのブランドに消費する金額が高まることを意味します。

ブランドの価値を客観的かつ定量的に捉える概念として、ブランドエクイティを継続的にフォローすることは重要です。

市場にモノがあふれ、売り手間の競争が激しくなっている現在、ブランドの差別化は企業の競争力を高めるための重要な手段です。

そして企業はブランド価値の育成・維持のために投資を行っていくことが求められます

ブランドを資産として捉え、その価値を常に注視することが求められているのです。