この記事を読むと分かる事
- 経営戦略の定義・事例・パターン(図解)
- 戦略立案の分析手法・実務プロセス
- 経営戦略を学ぶのにおすすめな参考書籍
様々な所で目にする「経営戦略」という言葉
新聞の企業経済面を読んでいるとこのように「経営戦略」について触れた記事を目にすることが多くあります。
これらの記事を読んでいる読者の中には、自分の会社に“経営戦略”部や“経営戦略”室があったり、「経営戦略」担当の役員がいたりする方も多いのではないでしょうか?
このようにビジネスの世界において、今や「経営戦略」という言葉はすっかり定着した感があります。しかし一方で、経営戦略という言葉について人々が持つイメージは必ずしも同じではありません。
ある人はM&Aのような会社全体の方向に関わるアクションをイメージしますし、ある人はR&Dや新商品開発のような具体的な商品・サービスについてのアクションをイメージします。なかには「アメーバ経営」のようなキャッチフレーズ的なものをイメージする人もいるかもしれません。
アメーバ経営とは. 稲盛が京セラを経営するなかで、京セラの経営理念を実現するために創り出した独自の経営管理手法。アメーバ経営では、組織をアメーバと呼ぶ小集団に分けます。各アメーバのリーダーは、それぞれが中心となって自らのアメーバの計画を立て、メンバー全員が知恵を絞り、努力することで、アメーバの目標を達成していきます。そうすることで、現場の社員ひとりひとりが主役となり、自主的に経営に参加する「全員参加経営」を実現する。
企業の研修などで、「自社の今後10年の経営戦略を考えてみましょう」という課題が出ると、参加者から出てくる答えのレベル感がバラバラ…といったことは良くあることです。
この記事では会社の経営企画部門チームのメンバーや、経営コンサルタントとして活躍したいと考えている方に向けて、経営戦略とは何かを解説し、経営戦略を構築する時の思考方やフレームワークを説明します。
「戦略」とは?
経営戦略は「経営」と「戦略」という2つの単語から成り立っていて、「経営に関する戦略」であることがわかります。では、戦略とは何でしょうか?
「戦略」を広辞苑でひいてみると、「戦術より広範な作戦計画。各種の戦闘を統合し、戦争を全面的に運用する方法。転じて、戦時社会運動などで、主要な敵とそれに対応すべき味方の配置を定めることをいう。」とあります。
「略」という漢字は、計略、策略などでも使われるように「はかりごと」「たくらみ」という意味があるので、漢字の意味からすると、戦略は「戦いや戦争のためのはかりごと・たくらみ」ということになります。
つまりもともと戦略というのは、戦争に関して用いられる軍事用語なのです。戦争には必ず敵がいますから、戦略の究極の目的は「敵」をやっつけることであり、そのために戦争を運用していく方法が戦略ということになります。
「戦略」と「戦術」の違いは?
戦略と同じように良く使われる言葉に「戦術」があります。戦略と同じように広辞苑で調べてみると、戦術とは「戦闘実行上の方策、一個の戦闘における戦闘力の使用法。一般に戦略に従属。転じてある目的を達成するための方法」とあります。
つまり戦術は、戦争を構成する一つ一つの戦闘や戦いにおいて、敵に勝つためにどのように動くかの方法ということです。
戦争全体を勝利するためにどのように自分達の兵力を配置するかの「戦略」があり、その戦略に基づいて進める中で発生する個別の戦闘に勝利するための動き方が「戦術」という関係になります。ただ最近のメディアなどを見ていると、戦略と戦術の境目が曖昧になってきていて、2つの言葉の意味が混ざって使われることも多いようです。
例えば戦術という言葉は最近ではスポーツなどでもよく使われます。
サッカーでも、「長谷部選手は“戦術”的理解度の高さで監督から信頼されている」、「監督はこの試合に守備的“戦術”で臨むことを決意した」のように戦術という言葉が使われます。このような例では、試合に勝つためにどのような基本方針で臨むかという戦略のことを言っているように読め、本来的には戦術より戦略という言葉を使うべきケースのように見えます。
経営戦略の意味・定義
ここまでは戦略や戦術という言葉の定義を確認しました。では「経営戦略」と言った場合、どのようなことを意味するのでしょうか?
既に説明しましたが、経営戦略は「経営に関する戦略」です。戦略が「敵に勝つためにどのように戦争を運用するかの方針」であるのであれば、経営戦略の定義は「競合(=敵)に勝つためにどのように市場での競争において自社の資源を運用するか」ということになるでしょう。
例えば、「成長のスピードを重視しM&Aを活用して規模の拡大を目指す」とか、「日本国内に留まらず国際的な市場をターゲットとして成長を目指す」といったものは経営戦略と呼べるでしょう。
こうした戦略の下に、「M&Aのターゲットとしてどの企業を狙うか」とか、「海外市場の開拓にあたり、どの国・地域の市場開拓を優先するか」といった戦術が構築されていくことになります。もちろん経営戦略は大企業に限ったことではありません。町の八百屋さんや食堂といった小さな個人経営のお店も商売(ビジネス)をやっている以上、成功するためには経営戦略が必要になります。
経営戦略の成功事例
では実際の経営戦略のイメージを掴んでいただくために、成功した(少なくともその時点では成功したと世間で認識された)経営戦略の例をいくつかご紹介しましょう。
キャノンの多角化戦略
ご存知の方も多いと思いますが、キャノンはもともと1937年に精密工学工業株式会社として設立されたカメラメーカーでした。
かつては売上のほとんどがカメラによるもので、そのカメラ市場には国内のニコンやペンタックス、さらに海外にはドイツのライカといった競合が存在して競争を繰り広げていました。
さらにこうした競合との競争に勝ったとしても、カメラという市場では市場規模に限りがあることから、キャノンは自社の強みを活かせる他分野への進出を図ります。そして自社の強みである光学技術と精密機械技術を活用でき、今後の成長が望めてまだ競合も限られている市場として、コピー機の分野に進出したのです。
さらにその後はプリンター分野にも進出して、いまや売上の多くをカメラ以外の分野から得る一大精密機械企業へと成長しました。
流行予測をやめたファッションブランドZARA
ZARAはスペインのファッションメーカーであるインディテックスが、世界中で展開しているファッションブランドです。
ファッション性の高い洋服を、手ごろな値段で提供するいわゆるファストファッションの代表的なブランドの一つと言われています。商品の企画から小売までを一貫して行う、SPA (Specialty store retailer of Private label Apparel)と呼ばれる形態で事業を展開しています。
GAPが始めたと言われるこのSPA自体もファッション業界においては画期的なもので、従来は商品企画→製造→流通→小売と何段階にも分かれていたプロセスを垂直統合することで、大幅なコストダウンとタイムリーな在庫管理を可能にしました。
※コスト削減の手法を以下記事で解説しているので、合わせてお読みください。
この記事を読むと分かる事 コスト削減の意義・具体例 コスト削減のアイデア・方法論 コスト削減コンサルの頭の中コスト削減の意味を確認コスト削減(Cost Red[…]
さらにZARAはそれまでの業界の常識であった「流行を予測して製造・仕入する」方式から、新商品を次々に投入して実際に売れた商品のコンセプトを追うという市場に対して受け身で接する戦略をとりました。そしてそれを可能にできるように、自社の製造から販売までの期間をできるだけ短縮したのです。
こうした戦略によりZARAはファストファッションの業界の中でも、高い収益性を実現することに成功しました。
経営戦略の基本パターン・フレームワーク
経営戦略を考える時に何か「常道」はあるのでしょうか?
経営戦略のパターンをどのようにとらえるかは、これまで数多くの専門家が研究をしてきました。その中から有名な考え方をいくつかご紹介しましょう。
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儲けられる(=ポジショニングに優位性がある)市場で戦う
経営戦略論のバイブルとも言われる本「競争の戦略」でマイケル・ポーターが唱えた戦略のパターンです。
ポーターは市場を5つの力(Five Forces)に分けて分析し、自社にとって儲けられる市場に参入することで企業は大きな収益をあげられるという考え方を提唱しました。(図1)
市場の構造を「業界内の競合」「買い手」「供給者」「新規参入業者」「代替品」という自社にかかる5つの力の観点で分析し、自社が儲けられる市場であればそこに参入することで成功できるというものです。
自社製品への代替品が無い市場に参入する、競合が少なく競争環境が緩い市場に参入する、といったように市場で自社が有利なポジションをとれるかを考慮して戦略を決定するという考え方です。
図1 Five Forces(5つの力分析)
儲けられる戦い方を選択する
これもマイケル・ポーターが提唱した考え方ですが、市場の中でどのように戦うのかについて適切な戦い方を選択しなければ儲けることはできないというものです。
ポーターは市場で戦うために、自社がとることのできポジショニングを大きく3つに類型化しました。(図2)
そしてその3つのポジショニングを決めるのは、市場(顧客ニーズ)全体を対象として戦うのか、特定の顧客ニーズに特化するのかという軸と、市場での自社の優位性の源泉をコスト(低価格)に置くのか、付加価値(差別化)に置くのかという軸の2つです。
市場全体を相手にコストの優位性を押し出して戦えば「コストリーダーシップ戦略」、オンリーワンの付加価値で戦えば「差別化戦略」、そして特定のニッチ市場にフォーカスすれば「集中化戦略」となり、ポーターはこの3つのうちのどの戦い方をするのかを適切に選択することが重要であるとしたのでした。
図2 ポーターの3つの基本戦略
自社を儲けられる組織にする
ポーターが市場を分析してチャンスのある市場の選択や市場で勝てる戦い方の選択をポイントとして挙げたのに対して、自社の能力に注目して自社を儲けられる組織にすることを重視する考え方です。
この考え方に沿って企業を分析する代表的なフレームワークが、戦略コンサルティング会社マッキンゼーのコンサルタントであったトム・ピータースらが提唱した「マッキンゼーの7S」です。(図3)
このフレームワークでは、企業を設けられる組織にするために考慮すべき重要な変数が7つあるとしています。そして、組織を動かすには「戦略」「組織」「社内の仕組み」といったハード面の要素に加えて、「価値観」「経営スタイル」「スキル」「人材」といったソフト面も重要であるとしました。
ピータースは組織の形に唯一絶対の正しい答は無く、7つの要素を企業の置かれた環境に応じて最適化することが必要であるとしました。
図3 マッキンゼーの7S
自社のコア・コンピタンスを活かす
自社の能力に注目する戦略論として欠かせないのが、C・K・プラハラドとゲーリー・ハメルが提唱した「コア・コンピタンス」の考え方です。
この考え方では企業の収益の源泉を、企業が持っている他社には真似のできない能力であるコア・コンピタンス(Core Competence)に求めました。
例えばナイキは自社製品のブランドを卓越したマーケティング戦略などによって育てる力がコア・コンピタンスで、機能的に他社と大きな差が無くても消費者に対して差別化できます。
ホンダは高性能なエンジンを開発・生産できる力がコア・コンピタンスで、バイクから自動車、芝刈り機、除雪機さらに自家用ジェット機にまで幅広く展開しています。
コア・コンピタンスは、①競争相手に真似されにくい、②顧客が認める価値を作れる、③様々な事業に展開できる、ものであれば技術、人材、企業文化など何でも良いのです。(図4)
プラハラドとハメルは、自社と競合を比較して自社が持っている様々な能力の中の何がコア・コンピタンスなのかを見極め、それを軸にした事業を展開していくことが成功の要因であると唱えました。
図4 コア・コンピタンス
多角化戦略
どの市場にチャンスがあるかという視点や、自社の強みをどう活かすことができるかという視点は個別の市場での話です。
そうした各市場での戦い方を踏まえると、企業が事業を多角化するとしたらどのように臨むべきかというポイントが出てきます。
企業の多角化に関する経営戦略としては、イゴール・アンゾフが提唱した「アンゾフの成長マトリクス(図5)」と、マッキンゼーと並ぶ戦略コンサルティング会社の雄であるボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が提唱した「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント」の考え方が有名です。
アンゾフは個別の事業戦略ではなく企業全体の戦略の方向性として、既存事業とのシナジーの有無に応じて4つの方向性を定義しました。
シナジーを評価する軸は、製品が既存事業と同じか否か、市場・顧客が既存事業と同じか否かで、各軸の2つの選択肢により2×2=4通りの成長の方向性を定義したのです。
4つの方向性とは、①市場浸透、②市場開拓、③製品開発、そして④多角化です。④は勿論ですが、②や③も新しい市場や製品に取り組むので広義には多角化を進めるということになります。
図5 アンゾフの成長マトリクス
適切な資源配分及び選択と集中
アンゾフは企業の成長の方向性として、広義・狭義の多角化がオプションであることを示しました。
一方で多角化があまりに進むと、企業の経営資源が分散してしまうという問題が発生します。経営資源をどのように配分するべきかという問題に対する解決ツールとしてBCGが示したのがプロダクト・ポートフォリオ・マトリクス(PPM)です。(図6)
このマトリクスでは、「市場の予想成長率」と「その市場での自社の相対シェア」(自社以外の競合トップに対する自社シェアの比率)を使って、各事業を4つに分類します。
市場が高成長で自社シェアも高ければ「スター」、高成長だが自社シェアが低ければ「問題児」、低成長だが自社シェアが高ければ「金のなる木」、そして低成長・低シェアなら「負け犬」と呼ばれます。
金のなる木事業から創出される資金を、スター事業に投資しつつ、次のスター候補である問題児の中から選別して投資を行う財務戦略です。
一方で負け犬事業は速やかに整理するといったように、企業はその経営資源を適切に配分するべきという考え方です。
こうした考え方に基づいて、多くの大企業が「選択と集中」を行ってきました。
図6 プロダクト・ポートフォリオ・マトリクス
ブルーオーシャン戦略
儲けられる市場を選んで参入する、自分の強みを活かせる市場を選んで参入するといった、既にある市場でどう勝つかという考え方に対して、2000年代になってチャン・キムとレネ・モボニュルが提唱したのが「ブルーオーシャン戦略」です。
ここでは、多くの競合が存在し血で血を洗う戦いを繰り広げている「レッドオーシャン」ではなく、新しい価値やコスト優位性に基づいて競合のいない新しい市場である「ブルーオーシャン」を作り出すことが重視されます。
新しい市場コンセプトを作り出し、それを実現できるような強みを自社に創造することで成功するという考え方です。
タブレットという新しい市場を作り出したアップルのiPad、伝統的サーカスの枠を超えたシルク・ド・ソレイユ、コーヒーショップの形を変えてしまったスターバックス、そして短時間に低価格でヘアカットをすることで新たなマーケットを作りだした日本のカットQBハウスなどが、こうしたブルーオーシャンのイノベーションの例として挙げられます。
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経営戦略立案のプロセス
経営戦略の理論が頭に入ったとして、では実際の経営戦略立案はどのように進めればよいのでしょうか?
もちろん、「絶対こうでなくてはいけない」という唯一絶対の解は無いのですが、一般的に戦略コンサルティング会社などでは大きく分けて3段階のプロセスをとります。
①現状分析→②戦略のオプションの検討→③ビジネスモデルへの落とし込みです。
現状分析
まずは市場の環境や自社の能力(ケイパビリティ)について現状を整理・把握します。
具体的にはマクロ経済環境、業界構造、自社の現状と強み・弱みなどの把握です。こうした現状分析を行う際に助けとなるのが、ポーターの5つの力分析、PEST(Political、Economic、Social、Technological)分析、SWOT(Strength、Weakness、Opportunity、Threat)分析、マッキンゼーの7S分析、そして3C(Customer、Company、Competitor)分析といった、ビジネス書でも良く紹介されている分析のフレームワークです。
本来は分析で何を明らかにしたいのかを考えた上で各分析を使い分けるべきなのですが、最初のうちはどれでも良いのでまずは1つの分析手法を使って世の中の現状の全体像を整理してみると良いでしょう(7S分析は自社の現状にフォーカスするので、世の中の現状全体の把握にはやや不向きな面はありますが)。
これらの分析手法はどれも、現状をコンサルティング用語でいうMECE(Mutually Exclusive but Collectively Exhaustive:「ダブりなくかつ漏れなく」の意)に整理するのに役立ちます。
現状をMECEに整理して全体像を掴むことが経営戦略立案の第一歩になるのです。
戦略のオプションの検討
現状分析に基づいてどのような戦い方をするのかという戦略オプションの検討を行います。
戦略オプションというと漠然とした感じになりますが、平たく言えば(1)何を強みとして戦うのか、(2)どんな市場・商品で戦うのか、(3)そのために自社はどんな能力が必要なのか、(4)自社の経営資源をどう配分するのか、についての方針を決めることです。
この時、大切なのは最初から「これっ」と決め打ちするのではなく、仮説を立ててみてそれをデータ分析などで検証し、内容を進化させていくことです。
仮説構築→データ分析などでの検証→進化した仮説構築→検証→・・・というループをできるだけ早く回し、戦略を煮詰めていくことが必要になります。
戦略コンサルティング会社の強みは、豊富な経験と社内にあるノウハウによってこの仮説進化のループを高速で行えることにあります。
ビジネスモデルへの落とし込み
戦略オプションの検討を通じて最終的な戦略の方向性が決まったら、それを実際に実行するためのビジネスモデルに落とし込みます。
「ビジネスモデル」という言葉はやや定義は曖昧なところがありますが、大まかに言えば「誰に、どんな価値を提供し、そのために何を調達・製造し、どうやって提供した上で、どうやって利益を得るか」を決めるということです。
ただし、こうしたビジネスモデルの構成要素は相互に絡みあうことが多く、一筋縄では決められません。
あるセグメントの顧客にサービスを届ける場合、どうしてもある特定のサービス提供方法が必要になるので、それでは利益が得られない、といったような問題には当たり前のように直面します。
戦略オプションの検討のところで仮説進化のループの必要性に触れましたが、ビジネスモデルについてもトライ&エラーを繰り返しながら構築していくことが必要になります。
経営戦略実行の前に~実務上のポイント~
さてようやく経営戦略が出来上がったら実行です。しかし行動する前に実務上はいくつかの関門があります。
それはできあがった”経営戦略をどう伝えるか”と、実行がうまくいっているかの“モニタリング”です。
経営戦略をどう伝えるか
個人商店であれば別ですが、企業が戦略を実行するには従業員にその戦略に沿って動いてもらう必要があります。
ですから策定した経営戦略をわかりやすい形で従業員に伝えるコミュニケーションが必要です。また大企業・上場企業となれば、株主・取引先など関係する先はさらに大きくなるので、そうしたステークホルダーに対しても自分達の経営戦略・ビジョンをわかりやすく伝えることが必要になります。
そうした意味で、経営戦略をできるだけわかりやすく簡潔にコミュニケーションすることは、経営戦略の成功のための重要な要素です。経営目標の数字というのは、こうしたコミュニケーションの一つとして目指すところを示すものとして大きな意味を持ってきます。
モニタリング
様々な努力と苦労を重ねて策定される経営戦略ですが、いざ実行してみたら期待したような成果が出ないという状況は、残念ながら数多くあります。
そのような場合は、手直しをするのか、我慢して成果が出るのを待つのかといった判断も必要です。しかし戦略実行の段階になると、こうした判断を行うのはなかなか難しいもの…。
ですから、走り出す前に経営戦略の実行が順調なのかをチェックするタイミングやチェックすべき要素(指標など)を準備しておくことが大切です。
経営戦略について学びたい人の参考書籍・本
経営戦略を考えるにあたってもっとたくさんの情報・知識が欲しいという方は、経営戦略についての書籍を読んでみることが良いでしょう。
経営戦略に関しては様々な本が出版されています。
まずは経営戦略とは何か、これまでにどんな経営戦略論があったのかといった全体像がわかる本を手に取ってみるのが良いのではないかと思います。
経営戦略論のさまざまなコンセプトを鳥瞰するのであれば、以下のような書籍がおすすめです。
- 「経営戦略全史」(三谷宏治著 ディスカバー・トゥエンティワン社)
- 「戦略市場経営」(D・A・アーカー著 ダイヤモンド社)
- 「BCG戦略コンセプト」(水越豊著 ダイヤモンド社)
もう少し優しい経営戦略立案についての入門書が良いという方には、以下のような書籍が読みやすいのではないかと思います。
- 「MBAグロービス経営戦略」(グロービス経営大学院 ダイヤモンド社)
- 「戦略脳を鍛える」(御立尚資著 東洋経済新報社)
それぞれの経営戦略に関して深く学ぶのであれば、各戦略論を提唱した専門家の著書が良いでしょう。
- 「競争の戦略」、「競争優位の戦略」(ともにマイケル・ポーター著 ダイヤモンド社)
- 「エクセレント・カンパニー」(トム・ピータース&ロバート・ウォーターマン著 英治出版)
- 「コア・コンピタンス経営」(G・ハメル&C・K・プラハラド著 日本経済新聞社)
- 「ブルーオーシャン戦略」(W・チャン・キム&レネ・モボルニュ著 ダイヤモンド社)
経営戦略からさかのぼって戦争のための「戦略」から学ぶという意味では、多くの経営者が愛読書とする以下の書籍も参考になります。
- 「戦争論」(カール・フォン・クラウゼヴィッツ著 中公文庫)
- 「孫子」(金谷治翻訳 岩波文庫)
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経営戦略は一夜にしてならず…
ここまで経営戦略について説明してきました。
しかし、書物やインターネットから得た知識も実際に使ってみようとするとなかなか上手くいかないのはある意味自然なことです。
経営は科学(サイエンス)の要素に加え、やはり経験やセンスといった職人芸(アート)の部分があるのは否定できません。
「ローマは一日にして成らず」ではありませんが、日ごろから経営に関する関心を持って、自分の中で「自分が社長なら…」というシミュレーションをしながらトレーニングし経験を積んでいくことが、結局は良い戦略家になるための早道なのかもしれませんね。