【取材】金融システムのプロがブロックチェーン企業を作る理由 – トイウェア岸卓甫

こんにちは。フリーコンサル.comの本多です。

今回は、個人的にお付き合い頂いているトイウェア 株式会社の代表である岸さんにインタビューをさせて頂きました。

金融システムのプロ達がトイウェアを 創業した経緯からブロックチェーンにかける思いや今後の事業展開などを伺いました。

toiware4岸 卓甫(きし たくほ)
東京学芸大学卒業後、金融機関向けのシステムコンサルティングを行うシンプレクスへ入社する。9年の間、株・FX・債権などの金融システム開発に携わる。その後、同社の同僚達とトイウェア株式会社を創業する。
トイウェア 株式会社(toiware Inc.)について
代表取締役社長:岸 卓甫
本社所在地: 〒105-0011 東京都港区芝公園3丁目6-23 光輪会館3F
設立年月:2017年3月7日

トイウェア創業の経緯

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――トイウェア を創業したきっかけを教えてください。

自分たちの手で新しいビジネスを立ち上げたいという想いから、同期3人、後輩1人とトイウェアを創業しました。

 

――ずっと聞けていませんでしたが、”トイウェア” ってどういう意味ですか。

トイウェア は、Things Of Interestingの頭文字です。面白い製品(Ware)を作りたいという思いを乗せた社名にしました。

これまで私たちは金融システムを中心に業務を行なってきましたが、金融以外のサービスでもやりたいサービスがあれば積極的に作っていきたいという意味が込められています。

 

トイウェア の事業領域

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――トイウェア の事業領域と参入した理由を教えてください。

Fintech系を中心にコンサルティング・システム設計・開発を行なっています。

会社としては、ブロックチェーン事業に最も力を入れています。実際、仮想通貨取引所の開発支援やトークンのインセンティブ設計支援も行なっています。

最終的には、自分たちでもトークンエコノミーを作りたいという構想を持っています。

あとFintech以外にも自社のWebサービス開発に取り組んでいます。

 

――事業を大きくする上での戦略や強みがあれば、教えてください。

トイウェア の強みは金融やシステムのプロ人材が集まっているところです。

元シンプレクスが5人、元アクセンチュア3人、元証券・仮想通貨業界出身者が1人と、金融・システムをバックグラウンドに持つ人材で構成されています。

金融商品を長年取り扱ってきたことやコンサルティング業務に従事していた経験から、「お金ってそもそも何だっけ?」「トークンにすると何ができるようになるのか?」といった情報や課題をゼロベースで整理出来る人材が揃っています。

 

――逆に弱みはありますか。

今、Fintechという業界を見ると、金融出身者で成功している人は少ないです。それは金融業界に長年いると変な常識のようなものが身についてしまっていたことが原因だと思っていて、私たちとしても危機意識を持っています。

ただ、トークンエコノミー(経済圏)を作り、ブロックチェーンを社会に認められるモノにするという文脈では、コンサル出身者や金融業界出身者だからこそ実現できる事も多く、自分たちの経験は強みになると捉えています。

 

ブロックチェーン事業について

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――なぜ、ブロックチェーン事業なんですか。

今、一番やりたい事業がブロックチェーンだからです。

自分たちのトークンエコノミーを作りたいという強い思いがあります。仮想通貨を作りたいというよりは、自分たちのトークンを中心とした経済圏を作りたいです。

 

――トークンエコノミーで実現できることってどんな事でしょうか。

まず、ブロックチェーンが社会に浸透すると、これまで国や企業が持っていた権力を徐々に個人に移すことが可能になります。

現実の世界は資本主義ベースで、「お金を持っている人が偉い」「競争に勝った人が良い」というような画一的な価値観で成り立っていると思います。

ブロックチェーンを用いることで、各個人の色々な価値観を許容でき、それぞれが今より少し幸せに過ごせたり、楽しむ事ができるような世界を作りたいというビジョンがあります。

 

――具体的な例があれば教えてください。

例えばホームレス芸人の小畑さん。芸人で売れなくて家もなかったため、キングコング西野さんの家に住んでいました。

ある暇な日にSNSを使って、「1日50円で何でもします」と宣言すると、依頼人が殺到しました。

実際に仕事を受注すると、金銭のやり取りとしては50円だけですが、依頼人から「食べ物ないでしょ」「泊まるところないでしょ」と声がかかり、その繋がりで暮らしていける様になりました。

昔は、この様な金銭だけに頼らない経済圏が多く存在していました。もちろん、近所の信頼できる人同士だから成り立っていた経済圏という所が実情です。

それが今、インターネットのコミュニティに置ける信頼によってこういった経済圏が生まれ始めています。

私達はこれを「恩で回る経済圏」と定義しており、そういった経済圏をブロックチェーンで作りたいと考えています。自分の得意なこと、自分の好きなことなど、自分を信用の代替に変えることができる世界。そういった世界も悪くないんだと共感して貰うことが出来ると信じています。

 

――トイウェア のブロックチェーン事業はどこに専門性を持たせるのでしょうか。

金融のバッググラウンド生かしてクリプトエコノミクスを用いたトークン設計、ブロックチェーンのスマートコントラクトの開発を行なっています。

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――ブロックチェーンを用いてシステムを開発するメリットって何ですか。

ブロックチェーンのいいところは、改ざんできない台帳によって、誰もが信頼できる情報をシステム的に管理できるところです。
非中央集権的であることは、現状ではコンプライアンスや法的な面での問題を制御できないというデメリットもあります。
※例えば、非中央集権システムだと「1万円で作った鶴」を「1万1千円で売る」などの法律・モラルに反する取引も制限なく出来てしまいます。
中央集権・非中央集権について
中央集権とは、政府などに権力・権利が集中している状態を指す言葉です。反対に非中央集権とは、各個人が権力・権利を持っている状態を指す言葉です。
それぞれにメリット・デメリットが存在するため、仮想通貨の文脈で中央集権派と非中央集権派でしばしば議論になることがあります。
そこのコンプライアンスを非中央集権的にやるために、経済学のメカニズムデザインなどに代表されるインセンティブ設計に取り組み、非中央集権的なデザインを考えています。

 

――中央集権 vs 非中央集権問題を解決する方法はあるのでしょうか。

犯罪などの取り締まりはこれまで通り、中央集権的に規制する必要があると思います。

 

――ブロックチェーン事業の進捗状況を教えてください。

もの作り補助金に採択され、汎用性の高いブロックチェーンECサイトを開発中しています。

モノを売買したり、評価することでトークンが貰えるという基本機能はもとより、良い商品をオススメした人もトークンを貰える仕組みを構築しています。

インセンティブの部分で賄える部分はできる限り非中央集権的に経済圏を作り、どうしても管理しないと行けない部分は中央集権で行うシステムになる予定です。

だからこそ、インセンティブの設計が重要で、そこに強みを持つ企業にしていきたいと考えています。

 

ゴルフ練習場検索サービス「condor(コンドル)」

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――コンドルというWebサービスを始めたきっかけを教えてください。

社員や私が趣味でゴルフをする事がcondor(コンドル)を始めたきっかけです。業界の傾向として年齢層が高く、技術的にも遅れていると感じたため参入しようと決めました。

 

――ゴルフ練習場検索サービスとしての戦略を教えてください。

ゴルフ場を予約するサービスには「楽天GORA」や「ゴルフダイジェストオンライン」などがあり、ゴルフスクールに関しても大手が参入している状況でした。

ただ「ゴルフ練習場」に関しては、まだどの企業もターゲットにしておらず、ブルーオーシャンだと感じました。

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都内のゴルフ練習場は40-50分待ちが当たり前の状況で、あるゴルフ場ではユーザが近くの銭湯に行って待っているという話も聞いたことがあります。圧倒的に利便性が低いため、便利にするためにはどうすべきかを考える必要があります。

さらに、ゴルフのイメージを変えたいと思っています。50歳以上の男性が90%を占めている事実から分かる通り、「おじさんのスポーツ」「仕事の一環で行うスポーツ」というイメージを持っている人が多いと思います。

初心者の若者を取り込むためには、まずは始めるハードルを下げる必要があると考えています。

ゴルフを初めて行う人のほとんどが、まずは練習場に訪れます。つまり練習場がゴルフのスタート地点なのです。実は都内にも練習場自体は、120-130ほどあり、施設面ではそれほどハードルは高くないはずなのです。

ゴルフを始めるきっかけである練習場の利便性を高める事を皮切りに、最終的には練習場自体を変えたいと思っています。

 

――今後、練習場はどのように進化しますか。

流行り言葉を使ってゴルフ2.0と呼んでいるのですが、バッティングセンターやボーリング場などの娯楽スポーツ(手ぶらで気軽にデート可能なもの)の様に、誰でも気軽に参加できるものにしたいと思っています。

最終的には、ゴルフの入り口としてはコンドルと言って頂ける様に、サービスをアップデートしていく予定です。

 

トイウェア の年収

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――トイウェア の年収を教えてください。

現状の年収は職種によりさまざまですが、エンジニア中心の会社で他のIT系の会社よりは高い水準の年収になっていると思います。

具体的にはブロックチェーンに詳しい人や、ビジネスを立ち上げる実力がある人を募集しています。

性質的には、ポジティブで頭の良い人が欲しいです。逆にネガティブな頭の良い人は今の事業フェーズでは要らないというのが正直な所です。

 

今後の事業展開

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――今後のトイウェア の事業展開を教えてください。

トークンエコノミーを作りたいため、そのベースとなるシステムを作ります。

将来的には制度が整い次第、ICOを行いたいと構想を膨らませています。

 

――ICOに拘る理由は何ですか。

ICOであれば、一部の企業や大口の投資家に依存せずトークンエコノミーを作る事ができます。初期フェーズで共感・投資してくれた多くの方々に還元できる事にも魅力を感じています。

 

――どのタイミングでICOをするなど決めていますか。

運の要素が多い業界だと認識していますので、社会的な観点も含めて市場が拡大するタイミングに、大きく投資出来る様な準備をしています。

とにかく早くお金を集めるというよりは、ブロックチェーン業界が明るくなったタイミングで、2番手・3番手に入っていける状態を戦略的に作る意識をしています。

 

――ブロックチェーン業界の課題を教えてください。

法的な要件、コンプライアンスをどうすべきかという課題は、業界の誰もが感じています。システム的にはまだまだパフォーマンスが悪い所です。

 

――パフォーマンスを改善する方法はありますか。

各ブロックチェーンの開発者達がアップデートを繰り返し、パフォーマンスの改善を行なっています。

私たちのECサイトに関して言えば、イーサリアムとサイドチェーンを組み合わせて開発を行っています。細かい解説は省きますが、メインチェーンとサイドチェーンでは処理速度が数百倍異なります。

 

 

――受託開発は行なっているのでしょうか。

現在、受託の開発案件は、仮想通貨取引所、ウォレット、AIとブロックチェーン事業に関連するものを中心に行なっています。

 

トイウェアの採用情報

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――採用活動はされてますか。

常時行なっています。

 

――どんな人が欲しいのでしょうか。

ブロックチェーンエンジニアやブロックチェーンに関する開発経験があると良いです。Webサービスを開発していたエンジニアなども欲しいですね。

エンジニア以外だとインセンティブ・コンプライアンスの設計や経済学(ゲーム理論など)を専門としていた人とも一緒に仕事をしてみたいです。

 

――年齢制限はありますか。

制限はないですが、若手(20-30代前半)を中心に募集しています。

 

――ありがとうございました。

ありがとうございました。

 

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