この記事では独立したコンサルタントが失敗しやすいポイントをご紹介します。
コンサルティングファームで働いてスキルが身に付いてくると、ファームに所属しないフリーランスとして、あるいは自分が会社を立ち上げて、コンサルティングを提供したいと考える人が現れます。
実際、大手ファームを卒業して個人コンサルタントとして活躍している人も多くいますし、今では中堅ファームと言われるコンサルティングファームも、元々はこうして独立したコンサルタントが起業したものだったりします。
しかし独立したコンサルタントが全て成功する訳ではなく、残念ながら失敗するケースも多くあります。
これからコンサルタントとして独立を考えている人に参考にしていただきたいと思います。
コンサルタントとして独立したい理由
コンサルティングファームで働いているコンサルタントが、独立を考える時にはいくつかの典型的な理由があります。
大きく分けると以下のような理由に分かれます。
- 経済的な理由
- 働き方に関する理由
- 業務内容に関する理由
理由①:経済的な理由~稼働に応じて収入を増やしたい
コンサルティングファームはパートナーからジュニアなコンサルタントまで職位の階層数が少ない、比較的フラットな組織です。
しかし、セールス責任やサービスのデリバリー責任を負っているパートナーと、パートナー以下のコンサルタントの間には大きな収入の差があるのも事実です。
また、マネージャーになるまでのコンサルタントは、業務に費やす時間が長くなりがちで、世間一般と比べれば高い水準にある給与も、時間単価にしてみると特に高く見えないといったことが起こり、収入について不満を感じる人も多くいます。
夜遅くまでや休日にも働いているコンサルタントの中には「自分がこんなに働いているのに時間単価にするとあまり貰えていないのは、パートナーの取り分が大きすぎるからだ」といった感覚を持ってしまう人も現れます。
こうした収入面での不満から「独立すればもっと多くの収入を得られるのではないか」「働いた量に見合った正当な収入を得たい」と、独立する人が現れるのです。
>>【リアル】コンサルタントが独立した場合の年収を具体的な案件で解説
理由②:働き方に関する理由~自分のやり方で働きたい
コンサルティングファームでは、短い期間で高品質のアウトプットを出す必要があり、期日に関するプレッシャーも強くなります。
さらにクライアントのニーズや事情で、作業が急に増えたり、作業の期日が短くなったりすることも頻繁に起こります。
そのため、コンサルタントの働き方は長時間かつストレスフルになりがちです。
さらにプロジェクトごとにチームを組成して動くコンサルティングファームでは、数カ月ごとに一緒に働く人が変わります。
ハンズオンでマイクロマネジメントするタイプのマネージャーと働くコツがわかってきたなと思ったら、もう次のプロジェクトではハンズオフタイプのマネージャーと仕事をするといったこともよくある話です。
こうした働き方を何年もすると、もっと自分のペースで、自分が気の合う人と(もしくは自分一人で)働きたいと考える人が出てきます。
こうした思いを持つ人にとって、独立は自分の働き方を変えるための有力な手段となります。
理由③:業務内容に関する理由~クライアントを自由に選びたい
大手コンサルティングファームは、様々な産業の様々な企業をクライアントとしています。
そうした中では、ビジネスのチャンスがあれば、どんな企業からの依頼にも対応することになります。
パートナーレベルになれば自分の成績も見ながら、どのクライアントの仕事の受注に力を入れるかなどに一定の調整をできますが、多くのコンサルタントはファームからアサインされたプロジェクトに参画するだけで、自分でクライアントを選ぶ機会はほとんどありません。
こうした状況ですから、コンサルティングファームに所属している以上、自分が関心を持っているクライアントの案件に必ず関われる保証はありません。
優秀なコンサルタントほど、ファームにとって重要なあちこちのプロジェクトにアサインされ、本人が希望するクライアントの案件に入り続けることは難しいといった皮肉な現実もあります。
自分が関心のある業界やクライアントの案件に関与したい、関心のあるテーマの案件に関与したいという気持ちが高まると、独立して自分でクライアントを選んで仕事したいと考えるコンサルタントが現れます。
コンサルタントの独立で失敗しがちな5つのミス
それぞれの理由で独立したコンサルタントですが、それらがすべて上手くいく訳ではありません。
独立後にビジネスを拡大できた成功ケースがある一方で、多くの独立コンサルタントは「まあまあ」「なんとか食っていける」といった状況になります。
そしてかなり多くの独立コンサルタントが失敗に終わっています。
こうした失敗ケースによく見られる原因について解説していきます。
専門性や強みが顧客に伝わらない
コンサルティングファームに所属している時に身に着けたはずの専門的知識やノウハウが、独立してみるとクライアントから評価されず、プロジェクトを受注できないケースです。
こうなってしまうのには原因があります。
まず、ファームに所属している時にクライアントは自分の専門性やスキルを評価してくれていると思っていたのに、実はクライアントはファームの看板を評価していた場合です。
クライアントはあくまでもファーム全体としての専門性を評価していたのであって、個々人のコンサルタントを評価していたのでは無かったことが後になってわかったという話はよく耳にします。
また、自分の専門性に対して、市場全体ではどのくらいニーズがあるのかをきちんと評価できていなかったというケースもあります。
あるクライアントにとってはとても貴重な専門的知識が、他のクライアントにとっては、わざわざ外部のコンサルタントにお金を払ってまで得たいものでは無いということもよくある話です。
「自分のキャラクター+専門性」として見た時に、市場で本当に評価されるのか、コンサルティングニーズがあるのかを独立前に客観的な視点で検討しておくことが必要です。
競争が激化している分野・市場を選ぶ
どんなビジネスでも競争が激化している市場、いわゆるレッドオーシャンで生き抜いていくことは難しいことです。
自分がサービスを提供していく分野や、主な収入源と想定しているクライアントにおけるコンサルティング市場がレッドオーシャンであると、独立後に安定的にプロジェクトを受注することは難しくなります。
特に対象市場における競合が経営体力のある大手のコンサルティングファームになる場合、競合に勝ってプロジェクトを受注するには価格などで不利な条件を受け入れざるを得なくなります。
自分が独立コンサルタントとして生きていくメインの市場については、競争環境を十分に分析し、安定的に受注を見込めるクライアントの見通しを立てておけることが望ましいです。
>>フリーコンサルが安定して案件を獲得できる営業手法【プロが解説】
組織体制が十分に整っていない
コンサルティングファームに勤めていると気が付きませんが、コンサルティングをビジネスとして行っていくには様々な機能が必要になります。
例えば、分析をするためのデータを収集したり、リサーチを行うために必要な文献調査や記事検索をしたりといった仕事は必須です。
コンサルティングファームでは、こうした元データの収集などはジュニアなコンサルタントが行ってくれることが多いですが、独立すればそうした作業から全てを自分で行う必要があります。
また、経理、税務、法務、労務といった事務処理や、システムのセットアップといった技術対応も必要です。
さらに、個人コンサルタントや少人数の会社が、検討範囲が広い大型プロジェクトを受注するには、外部の個人コンサルタントに業務委託するなどのスタッフの手当が必要になります。
コンサルティングファームにいると意識しなかった社内の組織体制が、独立した瞬間に必要なこととして健在化します。
こうした点に自分一人では対応できないのであれば、外部の専門家に費用を払って委託することになり、経営を圧迫します。
独立する際には、コンサルティング業務の周辺部にある業務を誰が担うのかといった点まで事前に考慮しておかなくてはなりません。
信用が低いため提案書が通らない
プロジェクトのクライアントが大手の場合、発注先の信用条件に審査があるケースがあります。
大企業では、個人には発注できないという社内ルールがあることもよくありますので、個人事業主でなく会社を設立して法人格を取得しておくことが望ましいと言えます。
クライアントにとって、発注したプロジェクトをコンサルタントが期待する品質で期日までに完成できるのかは重要です。
立ち上がったばかりで実績も無い小さなコンサルティング会社や、一人で全てを行っている個人コンサルタントはクライアントに不安を与えます。
仮に提案書の内容が良くても、こうした信用面での不安があればクライアントは発注をしてくれません。
小規模な案件ばかり担当して成長が見込めない
上で述べてきた4つの要因の結果、独立したばかりのコンサルタントが大型の案件を受注する難易度は高いです。
従って、最低限の売上・利益を確保するためには、小規模な案件を数多くこなすことになります。
多数のクライアントで小さな案件をこなすことは、作業が分散して自分の経営資源を非効率に使うことにつながり、結果として、いつまでたっても核になる主要案件が確立できず、事業の成長が難しくなります。
こうした状況になると、日々細かな案件の仕事に追われて、独立前に期待したような、経済的なメリットや、自分の目指す働き方の実現は難しくなってしまいます。
可能であれば、独立時点で核になる安定的な仕事の目途は立てられていることが望ましいと言えます。
コンサルタントの独立で失敗を防ぐために必要なこと
ここまで説明してきたように、コンサルタントが独立する際には数多くの難題が待ち受けています。
難題をクリアできないと、独立しても安定的に収入を得ることができず、結果として短期間で廃業するといった失敗ケースになります。
独立の際には、以下のような点について十分に検討し、準備する必要があります。
ニッチな分野で専門性や得意領域を活かす
独立後に自分が売りにしていく専門性は、できるだけニッチな分野のものであることが望ましいと言えます。
大手ファームが競合になるような、レッドオーシャンの分野をメインにしようとすれば、実績も無く、組織体制も弱い個人コンサルタントや小さなコンサルティングファームは価格を安くするくらいしか武器はありません。
いきなり競争相手がたくさんいる池(ビジネス分野)で大きな魚(受注)を狙いに行くよりも、競争相手のいない小さな池で小さな魚を安定的に釣り上げることから始める方が現実的です。
そのためにも、自分の専門分野は世の中にとってどのくらいの希少性があるのかを、客観的に把握しておくことが必要です。
顧客目線で分かりやすい説明を心がける
失敗例で挙げたように、個人コンサルタントや実績の少ない小さなコンサルティング会社の提案書は、クライアントに“色眼鏡”で見られてしまうリスクがあります。
クライアントにそうした不安を乗り越えてでも、採用したいと思ってもらえるような提案をすることが必要となります。
提案をする際には顧客目線で、個人・小さな会社だからこそできるような柔軟な対応や、きめ細やかな対応を提案することを意識しましょう。
その上で、分かりやすい説明を行い、個人コンサルタントしてのあなたの魅力をアピールするようにしましょう。
コミュニティ別に人脈を形成する
独立したコンサルタントの経営が軌道に乗るまでには、相応の時間がかかるケースが多いようです。
大きなハードルの一つは、案件を提案する機会を得ることです。
コンサルティングファームに所属している時に関係を構築していたクライアントがあるとしても、それだけで安定的にビジネスをしていくことは難しく、新しいクライアントを開拓することが必須です。
その意味で、様々なところに顔を出して人脈を形成していくことは重要です。
自分が売りにしていく専門分野に関係するコミュニティには積極的に参加して、人脈を形成することを心がけましょう。
知り合った人から直接発注が無くても、その人から紹介された人を通じてといったこともありますから、できるだけ人脈を広げておくことが重要になります。
たとえ低リスクな起業でも準備は必要
独立してコンサルタントとしてやっていけるまでには、様々なハードルがあります。
当面の間はプロジェクトを発注してくれそうなクライアントの目途がついている、所属していたコンサルティングファームから外部委託の仕事を得られそうといった、比較的リスクが低いケースでも、独立後に永続的に事業を行い、事業を成長させていくにはそのための準備が必要です。
独立した先輩コンサルタントがいれば、その人の話を聞いておくことも役に立ちます。
また、安定的に自力で案件獲得ができるようになるまでのサポート役として、フリーコンサルタントのマッチングサービスや紹介エージェントなどを活用することも考えておくと良いでしょう。
十分な準備を行い、独立コンサルタントとしの成功を目指して頑張って下さい。